ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が注目を集める中、「Retrieval-Augmented Generation(RAG)」という技術が話題となっています。RAGは外部知識を活用し、最新情報に即した応答を生成できるのが特長です。本記事では、RAGの基礎や利点、活用事例をわかりやすく解説します。
RAGを学ぶ前に改めて前提知識をおさらいしましょう。
大量のテキストデータを学習して、文章の理解や生成などを行う人工知能(AI)の技術のこと。巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築されています。
文章の並び方に確率を割り当てる確率モデル。例えば、ある画像からそれが猫かどうかを当てる「予測モデル」を考えると、猫に近い画像は猫であるという確率を高く割り当て、犬に近い画像は猫であるという確率を低く割り当てます。同様に、「言語モデル」の場合、より自然な文章の並びに対して高い確率を割り当て、文章として成立しない並びには低い確率を割り当てます。(出展:NEC)
RAG(検索拡張生成)とは、LLMに検索機能を組み合わせた生成AIのフレームワークです。
その特長は、LLMが学習していない外部の膨大な知識を活用して、より正確で最新の情報を含んだ応答を生成できること。
従来のLLMは学習したデータの範囲内でしか回答できませんでしたが、RAGならその制約を超えることが可能です。
例えるなら、LLMが頭の中の知識だけで回答するのに対し、RAGは必要に応じて図書館で調べものをしながら答えを組み立てる、といったイメージ。外部の知識を利用することで、LLMより幅広い質問に対応できるわけです。
企業では、ChatGPT等を応用し、社内データなどを学習した「特化型LLMシステム」という形で使われるケースも増えているようです。
ChatGPTを普段から利用している方であれば、PDFファイルをアップロードしてナレッジ(知識)として活用されている方もいるでしょう。これがRAGとして機能することで、以降の会話でPDFファイルの情報を参照した回答を生成することが可能になります。
さらに、チャットボットであれば回答をRAGにある知識だけに限定することで、LLMのハルシネーション(誤った情報をさも本当のことのように出力すること)や、古い知識を間違って答える問題も解決できる点もメリットです。
この仕組みを使ってサービスのQ&A情報をあらかじめ学習させておき、顧客サポート用チャットボットを作ることも可能です。
RAGは主に「Retriever」と「Generator」という2つの要素から成り立っています。
この2つが連携することで、質問の背後にある専門的な文書やリアルタイムに更新されるデータを取り入れた「拡張された(Augmented)」回答を生成できるのです。
たとえば、企業内で頻繁に改定されるマニュアルや、学術分野の最新論文を参照するケースにおいてはRetrieverが最新版の情報を探し出し、Generatorがわかりやすくまとめてくれます。
結果として、単なる文章生成ではなくユーザーがすぐに使える実用的で正確な解答が得られるようになるのです。
RAGのメリットはなんといっても情報の「鮮度」と「信頼性」の高さです。従来のLLMは過去のデータで学習するため、最新情報への対応が難しい面がありました。
2025年1月現在、ChatGPTではWeb検索機能が利用でき、最新情報も取得してくれますが、参照したサイト情報が正しいかどうかまでは判断できません。
一方、RAGはあらかじめ設定した外部データベースをリアルタイムに参照するため、この問題が解消できます。
また、回答の根拠となる情報源をユーザーに示せるため、信頼性も格段に向上。医療や法律など、正確性が何より重要な分野での活用が有望視されています。
一方で、RAGにはまだ課題もあります。適切な知識ベースの選定や、検索精度の向上は大きな論点。データやシステムの管理を適切に行わないと、誤った情報を提供してしまうリスクもあるのです。
また、RAGを作成するために、AIの知識を持った適切な人材のリソースが必要になる点も課題だと言えるでしょう。RAGは一般的な文章形式でアップロードすることで機能しますが、RAGの適切なデータ整備や取得方法を細かく設定しないと、思ったような回答が得られない可能性があります。
RAGの本格活用には、質の高いデータ整備と、リスク管理の両面からのアプローチが欠かせません。各組織では、目的や状況をしっかり見定めた上で、長期的な視点から導入を検討することが大切ですね。
RAGの登場で、ChatGPTに代表されるLLMの活用の幅はさらに広がりを見せています。顧客対応や社内研修用チャットボットなど、外部知識とAIを組み合わせる新たなアプローチは、ビジネスに大きなインパクトを与えるはず。
これからRAGを使ってみようと思っている方はまず、ChatGPTにPDFファイルをアップロードしてみて、どのように回答が変わるか体験してみると良いでしょう。業務効率やユーザー体験の質を一段と高める新たな可能性が開けるはずです。