新潟県三条市が大日本印刷と興味深い実証実験を行っている。2024年12月5日から11日まで、行政DXサービス「メタバース役所」に市役所職員の分身となるAIアバターを配置。住民がアバターに相談することを通じ、不安や悩みが軽減されるのか有効性を検証する。「誰かに相談したいが、デリケートな内容だと相談しにくい」そんな心理的ハードルをAIアバターが下げてくれるかもしれない。
新潟県三条市、大日本印刷、PwCコンサルティングは2024年7月に「関係人口創出を通じた持続可能なまちづくりに関する連携協定」を締結している。メタバースなど先端技術を活用し、地域住民の『エンゲージメント(愛着や思い入れ、地域活動への関与)』の向上や、誰もが地域サービスを活用できるインクルーシブ(包摂)な行政を目指している。
近年、人手不足により地方自治体が対応する業務範囲拡大などの課題解決が急務だ。三条市は、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)としてメタバースを中心に先端技術を活用したアプローチに着目。多様化する地域課題に対し充実した住民サービスを実現していくことが地域の発展、持続可能な自治体の運営に不可欠と考えている。
2024年7月の協定式の様子。写真左からPwCコンサルティング 上席執行役員 三治信一朗氏、三条市市長 滝沢亮氏、DNP 常務執行役員 浅羽信行氏(写真引用:大日本印刷)
活用されている「メタバース役所」は、大日本印刷が提供する行政DXサービス。「電子申請手続きの総合窓口」「安心安全な各種相談業務」「住民交流の場」が、インターネット上の仮想空間で提供され、利用者は、ネット環境があればウェブブラウザ経由でアバターを通じて簡単に参加、利用可能になる。
物理的・心理的・時間的な障壁により、既存の環境・制度・サービス等の恩恵を享受しづらい人たちに寄り添う行政DXサービスだ
2024年12月5日~11日に行われている今回の実証実験では「メタバース役所」に市役所職員の分身となるAI(人工知能)キャラクター(アバター)を配置。住民がこのアバターに相談することを通じて、不安や悩みが軽減されるか、有効性を検証するという。
相談のテーマは「離婚」に絞っている。
昨今、公的機関への相談件数は増加傾向にあり、相談は「離婚」に関する件数が多いという。一方で、デリケートなテーマのため「相談先がわからない」「近所の人や友人に知られたくない」など、相談しにくいという課題がある。プライバシーが保護された「メタバース役所」を活用することで、相談の心理的ハードルを下げることを期待し、相談テーマが「離婚」に絞られた。
相談者の配偶者との関係や家庭内の不安・悩みなどに対し、AIアバターが多様な選択肢の提示と適切な支援機関の案内をサポート。今回の有効性検証の成果を活かし、AIアバターとの対話が相談者の精神的な孤立を防ぎ、自治体が住民の不安・悩みを早期に発見して対応していくことを目指す。