2024年11月14日に推論に強い言語モデル「Gemini-exp-1114」をリリースしたGoogleは、11月19日にも新たな言語モデル「LearnLM 1.5 Pro Experimental」をリリースしました。
教育に特化したこのモデルには、以下のような特徴があります。
●アクティブラーニング(能動的学習)に適したチャット機能
●ユーザーに合わせて回答を調整する機能
この記事では、LearnLM 1.5 Pro Experimentalの概要や使い方、GPT-4oとの性能比較などを詳しく説明していきます。特に教育分野に携わる方であれば必見の内容のため、ぜひ最後までお読みください。
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LearnLM 1.5 Pro Experimentalは、教育や学習での使用に特化して開発された、試験的に運用されている言語モデルです。学習科学の原理原則に基づいて訓練されているため、以下のような効果的な学習支援ができるのが特徴です。
●アクティブラーニング(能動的学習)の促進
●認知負荷(知的な負担)の管理
●学習者一人ひとりに合わせた適応
●学習者の好奇心を刺激
●メタ認知(自分の思考を客観的に把握すること)の深化
LearnLM 1.5 Pro Experimentalは、2024年11月19日からGoogle AI Studioにて無料で公開されています。1回のチャットで最大32,767トークンもの長い入力に対応可能です。定期テストの対策や受験勉強などに役立つことが期待されています。
ここからは、LearnLM 1.5 Pro Experimentalの使い方を簡単に説明し、実際に使ってみてGPT-4oとの性能を比較します。
まず、Gemini AI StudioにアクセスしてGoogleアカウントでログインし、利用規約に同意しましょう。
ログインしたら、画面左側の「Create New prompt」をクリックして新しいワークスペースを開き、画面右側のモデル選択欄から「LearnLM 1.5 Pro Experimental」を選択しましょう。
これでLearnLM 1.5 Pro Experimentalを使う準備は完了です。
実際にプロンプト(AIへの指示文)を入力して、LearnLM 1.5 Pro ExperimentalとGPT-4oの回答性能を比較していきましょう。
プロンプトはGoogle公式サイトで公開されている、宿題をサポートするプロンプトを日本語に翻訳して利用します。
プロンプト
あなたは生徒の宿題を手助けする専門的な家庭教師です。生徒が宿題の問題を提示した場合、以下の選択肢から希望を確認してください:
●答えが欲しい場合: 生徒がこれを選んだ場合、問題を解くための手順を、構造化されたステップごとに説明してください。
●指導が欲しい場合: 生徒がこれを選んだ場合、直接解答を提供するのではなく、問題を解く方法を導きましょう。
●フィードバックが欲しい場合: 生徒がこれを選んだ場合、現在の解答や試みを提出してもらい、正解であればその答えを認め、もし間違いがあれば修正するためのフィードバックを提供してください。
常に正しい答えに目を光らせておきましょう(たとえ詳細が不足していても)。生徒が途中で正しい答えにたどり着いた場合、追加の作業を求めることなく、それを受け入れてください。
引用:Google AI for Developers
今回は、以下のような問題を宿題として入力してみました。
あるクラスの生徒のうち、左利きの生徒の割合は15%です。左利きの生徒が6人いた場合、このクラスの生徒の総数を求めてください。
Gemini AI Studioでは、プロンプトを画面上部の「System Instructions」に入力し、宿題は画面下部のテキスト入力欄に入力します。
LearnLM 1.5 Pro Experimentalの出力結果
まずはLearnLM 1.5 Pro Experimentalの出力結果を見ていきましょう。
宿題を入力すると、まずはどのような手伝いが必要か尋ねられます。今回は「指導が欲しい」と入力してみたところ、以下のような解説をしてくれました。
少し説明が難しかったので、具体的な式を教えてくれるようプロンプトを入力。すると、問題を解くための具体的な式を提示してくれました。
ここまでの内容で答えは「40人」であることがわかりました。しかし、なぜこのような式で計算する必要があるかわからないため「式の意味を教えてください」と入力してみました。
回答は以下の通り。
数学を完全に忘れていましたが、この説明を読めば式の意味が理解できました。このように、LearnLM 1.5 Pro Experimentalを活用すれば、学習する問題に対してまったく理解できていなくても、学習者が理解できるまで分かりやすく問題を説明してくれるのです。
なお、ここまでの質問で使用したトークン数は1250トークンでした。同じレベルの問題であれば25問ほど質問できる計算になるため、1日の宿題は片付けられそうですね。
GPT-4oの出力結果
続いて、GPT-4oの出力結果も見てみましょう。ChatGPTを使う場合は、まずプロンプトを入力します。
次に、Geminiと同じように宿題を入力したところ、以下のような回答が生成されました。
最初に入力したプロンプトを無視してしまい、いきなり答えを回答してしまいました。「指導してください」と入力したところ、以下の回答が生成されました。
「OK」と入力します。
計算方法が生成され、そのまま答えを教えてくれる結果となりました。問題を解くことはできるかもしれませんが、受動的な学習となり、理解力を高めることは難しいかもしれません。
LearnLM 1.5 Pro Experimentalは生徒役の質問に対して的確に答えつつ、さらに学びを深めるための問いかけを投げかけてくれます。
教育や学習支援の観点からは、LearnLM 1.5 Pro Experimentalの方が適していると言えるでしょう。
GPT-4oは幅広い分野の知識を持っているため、分からない単語や文章の意味を理解するために利用するなど、併用することで学習効率が高められるでしょう。
以上、Googleがリリースした新モデル「LearnLM 1.5 Pro Experimental」について解説しました。現在は実験的な言語モデルとして提供されていますが、正式にリリースされ、AIアプリなどに組み込まれれば、塾などのビジネスモデルが大きく変化する可能性を秘めています。
このような新モデルの登場はAI業界全体にも大きな影響を与えており、他社の言語モデルの競争や進化をさらに加速させています。
GPT-4oやClaude 3.5 Sonnetなど選択肢は増える一方です。今後は、どのチャットボットを使うかだけでなく、どの言語モデルを使うのかを意識することが重要になりそうです。
各言語モデルがどのような処理が得意なのかを知っておくだけでも、AIをより効果的に活用できるはずです。
(各チャットボットの違いを検証した「ChatGPT、Claude3、Geminiの実力を検証!文章・画像認識・プログラミング能力の違いは?」記事もぜひ併せてお読みください。)