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2024.12.26

なぜビットコインには利回りがないのか?「コンセンサスアルゴリズム」から読み解く暗号資産投資の新常識

投資金額に対するリターン(利子・配当・売却損益)の割合を指す「利回り」。投資をしない人でも、銀行に預け入れした金額に対する運用益といった形で身近なものと感じているでしょう。

暗号資産も同様です。しかし、なぜかビットコインには利回りが存在しません。一方、同じ暗号資産でもイーサリアムには利回りがある――。何が違うんでしょうか?

この違いは、それぞれの暗号資産が採用している「コンセンサスアルゴリズム」という仕組みに起因しています。ビットコインはPoW(Proof of Work)、イーサリアムはPoS(Proof of Stake)という異なる仕組みを採用しているため、運用における収益構造も大きく異なるのです。

本記事では、難しく考えられがちなコンセンサスアルゴリズムを、投資収益という観点から分かりやすく解説します。

【併せて読みたい】

コンセンサスアルゴリズムを投資の観点から理解しよう

暗号資産の世界では、取引の正当性を確認・検証する方法として様々な仕組みが採用されています。この仕組みの違いが、投資家の収益機会に大きな影響を与えています。

ブロックチェーンを支える2つの仕組み:PoWとPoS

(引用元:CoinDesk JAPAN

PoW(Proof of Work)は、コンピュータの計算能力を使って取引を検証する仕組みです。ビットコインに代表されるこの方式では、「マイニング」と呼ばれる作業に参加する人々が、専用の機械を使って複雑な計算問題を解くことで取引の確認を行います。

一方、PoS(Proof of Stake)は、保有する暗号資産の量に応じて取引の検証を行う権限が与えられる仕組みです。イーサリアムが採用するこの方式では、自身の保有資産を「ステーキング」することで取引の承認に参加し、その対価として報酬を得ることができます。

それぞれの仕組みが投資収益に与える影響

PoWでは、一般の投資家が直接的な利回りを得ることは困難です。なぜなら、収益を得るためには高価な専用機器を購入し、膨大な電力を消費する必要があるためです。

これに対してPoSでは、保有している暗号資産をステーキングすることで、比較的容易に利回りを得ることができます。これは、株式投資における配当に似た性質を持っています。

なぜPoWのビットコインには利回りが発生しないのか

ビットコインに利回りが発生しない理由は、その設計思想に深く関係しています。ただし、近年では取引所が提供する各種サービスによって、一見するとビットコインでも利回りが得られるように見えることがあります。

マイニングによる収益の仕組み

(引用元:GMOコイン

ビットコインのネットワークでは、取引の承認作業(マイニング)に対して報酬が支払われます。しかし、この報酬を得るためには、専用の高性能コンピュータ(マイニングリグ)への多額の投資と、莫大な電気代が必要です。そのため、一般の投資家がマイニングで利益を上げることは現実的ではありません。

一般投資家にとってのビットコイン投資の特徴

「でも、取引所にビットコインを預けると金利がつくじゃないか」と思う方もいるでしょう。しかし、これはビットコイン自体が生み出す利回りではありません。暗号資産取引所が、ユーザーから預かったビットコインを運用して得た収益から、利息として支払っているに過ぎないのです。

つまり、これは銀行預金と同じような仕組みであり、ビットコインの本質的な性質とは関係がありません。そのため、ビットコインの運用でインカムゲインを狙うことは難しく、投資の主な収益源は価格の上昇によるキャピタルゲインになります。

なぜPoSのイーサリアムには利回りが発生するのか

イーサリアムも以前はビットコインと同じPoWを採用していましたが、2022年9月 にPoSに移行したことで、一般投資家でも比較的簡単に利回りを得られるようになりました。

ステーキングによる収益の仕組み

(引用元:Ledger

イーサリアムのステーキングでは、保有するイーサリアムをネットワークの運営に役立てることで報酬を得られます。これは、自分の資産を「担保」として提供することで、取引の承認に参加する権利を得る仕組みです。

2024年11月現在、個人でステーキングを行うには32ETH(約1,500万円)という高額な投資資金が必要です。しかし、取引所の中には、多数のユーザーの資金を一つの大きな資金としてまとめて運用する仕組み(プールサービス)を提供しているところもあり、このようなサービスを使えば少額からでもステーキングに参加することができます。

一般投資家にとってのイーサリアム投資の特徴

イーサリアム投資では、価格上昇によるキャピタルゲインに加えて、ステーキングによる継続的な収益(インカムゲイン)も期待できます。この「複合的な収益機会」が、イーサリアム投資の魅力の一つとなっています。

特に、ステーキングによる収益は、株式投資における配当のように定期的に得られる収入として期待できます。市場価格が下落している局面でも、ステーキング報酬という形で着実に資産を増やすことができるため、長期投資の観点からも魅力的です。また、ステーキングに参加することは、イーサリアムのネットワークの安定性に貢献することにもなり、投資先の価値向上にも寄与する仕組みとなっています。

コンセンサスアルゴリズムを学べば投資スタイルも変わる

コンセンサスアルゴリズムの違いを理解することは、暗号資産投資の戦略を立てる上で重要な要素となります。それぞれの特性を活かした投資アプローチを検討しましょう。

PoW型とPoS型、それぞれの投資アプローチ

PoW型のビットコインは、価格変動を活かした売買による利益獲得が中心となります。長期保有(HODL )戦略や、大幅な市場の変動を利用した取引が主な投資手法です。これは、「デジタルゴールド」とも呼ばれるビットコインの価値保存機能に着目したアプローチだと言えます。ビットコインは発行量に上限があり、希少性が担保されているため、長期的な価値上昇を期待する投資家も多く存在します。

一方、PoS型のイーサリアムは、長期保有しながらステーキング報酬を得るという、比較的安定した投資アプローチが可能です。株式投資における高配当株投資に似た戦略を取ることができます。さらに、イーサリアムはスマートコントラクトのプラットフォームとしても機能しており、DeFiやNFTの発展とともに、その利用価値が高まっていく可能性もあります。このような技術的な発展性も、イーサリアムを長期保有する理由の一つとなっています。

注目すべき新しい動き

最近では、ビットコインでもレイヤー2と呼ばれる技術を活用して、擬似的な利回りを得られるような新しいプロジェクトも登場しています。ただし、これらは追加的な技術やサービスによるものであり、ビットコイン本来の性質とは異なることを理解しておく必要があります。

また、既存の金融機関も暗号資産に関心を示し始めており、ETF(上場投資信託)の登場なども相まって、投資手法の選択肢は着実に広がっています。このような動きは、コンセンサスアルゴリズムの違いを活かした新しいサービスの登場にもつながっており、今後も新しい投資機会が生まれる可能性は十分にあります。

コンセンサスアルゴリズムを学べば暗号資産への理解も深まる

コンセンサスアルゴリズムの違いを理解することは、単なる技術的な知識以上の価値があります。それは、暗号資産投資における収益機会の本質を理解することにつながるからです。

ビットコインとイーサリアムでは、その根本的な仕組みの違いによって、投資家が得られる収益の性質も異なります。この違いを理解した上で、自身の投資目的やリスク許容度に合わせた資産選択を行うことが、成功への近道となるでしょう。

今後も新しいコンセンサスアルゴリズムや、既存の仕組みを拡張する技術が登場する可能性があります。基本的な仕組みを理解しておくことで、それらの新しい投資機会を適切に評価できるようになるはずです。