TON(The Open Network)は、メッセージングアプリのテレグラム(Telegram)から生まれたブロックチェーンプラットフォームです。2024年現在、9億5,000万人以上のユーザーを抱えるテレグラムとの親和性を活かし、ゲームやSNS、決済など様々な分野でのビジネス活用が進んでいます。特に、Web3の入り口として一般ユーザーの参入障壁を下げるようなプロジェクトが注目を集めています。
本記事では、TONの基本的な仕組みから具体的なビジネスでの活用法、すでにTONが導入されている実例に至るまで、幅広く解説します。
TON(The Open Network)は、世界最大級のメッセージングアプリ「テレグラム」から派生したブロックチェーンプラットフォームです。当初は「Telegram Open Network」として開発が始まり、現在は独立したプロジェクトとして発展を続けています。
(引用:TON)
TONは2018年、テレグラムの創設者Pavel Durov氏によって構想が発表されました。当初はテレグラムが主導する形で開発が進められていましたが、規制上の問題から2020年にテレグラムの手を離れ、オープンソースプロジェクトとして開発が継続されることになりました。
その後、コミュニティ主導の開発体制に移行し、2024年現在では多くの開発者や企業が参加する成長著しいブロックチェーンプラットフォームへと進化しています。
テレグラムとTONの最大の特徴は、両者の緊密な統合にあります。テレグラムアプリにはTONウォレットが標準で組み込まれており、メッセージのやり取りから決済まで、アプリ内で完結できる設計となっています。また、9億5,000万人以上のテレグラムユーザーが潜在的なユーザーとなり得る点も、TONの大きな強みとなっています。
TONは高速な取引処理能力、および低コストの手数料構造を特徴としています。1秒あたり数万件の取引を処理でき、1取引あたりの手数料も数円程度に抑えられています。テレグラムアプリとの統合による簡単な操作性も、一般ユーザーにとって大きな魅力となっています。
TONは、その特徴を活かして様々なビジネス分野での活用が進んでいます。特に注目されているのが、Web3サービスへの入り口としての活用です。
TONの最大の特徴は、テレグラムアプリを通じたアクセスのしやすさにあります。初心者向けのウォレット機能や、簡単な操作でのトークンの送受信、既存のテレグラムアカウントとの連携など、Web3サービスへの参入障壁を大きく下げることに成功しています。
TON上では、特に「Tap-to-Earn」と呼ばれる簡単な操作で楽しめるゲームが人気を集めています。代表的な例として、画面をタップしてコインを獲得する「Notcoin」や、取引所運営シミュレーションゲーム「Hamster Kombat」などがあります。これらのゲームは、複雑な操作や事前知識を必要とせず、誰でも気軽に暗号資産に触れられる機会を提供しています。
TONの決済システムは、テレグラムアプリ内での即時送金を可能にし、国際送金の手数料を大幅に削減しています。また、少額決済にも対応しており、店舗での決済システムとしても導入が進んでいます。
TON上では、コミュニティメンバーが主導する形で様々なプロジェクトが展開されています。独自トークンの発行やDeFiサービスの開発、NFTプロジェクトの立ち上げ、さらにはソーシャルファイナンス機能の実装など、多岐にわたる開発が進められています。
TONの実用化は着実に進んでおり、様々な分野で導入事例が増えています。
Tap-to-Earnゲームは、TONプラットフォーム上で最も成功している事例の一つです。
「Notcoin」は画面上のコインをタップするだけの単純な操作性が功を奏し、リリースからわずか1ヶ月で50万人のプレイヤーを獲得。その後、正式版のローンチで410万人まで成長を遂げました。
「Hamster Kombat」は暗号資産取引所のCEOとなって運営を行うシミュレーションゲームで、YouTube公式チャンネルの登録者数は2024年10月末時点で3,700万人 に達し、日々のアクティブプレイヤー数は5,000万人に達しています。
(引用:Hamster Kombat)
TON上では、コミュニティ主導で様々なミームコインも展開されています。
「DOGS」は、テレグラムのマスコット「Spotty」を活用し、トークン総供給量の大部分をコミュニティに配分することで注目を集めました。投資家への割当を行わない方針を打ち出し、純粋なコミュニティトークンとしての性格を強調しています。
「NOT」はNotcoinの公式トークンとして発行され、Binanceのローンチプールでの取り扱いが決定したことで大きな話題となりました。特に、総供給量の100%が上場時に流通する設計であることや、Tap-to-Earnの仕組みを通じてテレグラムユーザーをWeb3の世界に取り込むことに成功した点が注目されています。
「HMSTR」は、Hamster Kombatの公式トークンとして、コミュニティ主導のガバナンスを特徴としています。大規模なエアドロップの実施によってコミュニティの拡大に成功しているほか、複数の大手取引所への上場を実現し、活発な取引が行われています。
既存の企業もTONの活用を始めています。決済サービス企業では、テレグラムの巨大なユーザーベースを活用した送金システムの導入が進んでおり、特に国際送金の分野で従来よりも大幅に手数料を抑えたサービスの提供を実現しています。
なかでも「TonKeeper」というウォレットサービスは、単なるウォレット機能を超えて、TON上のDeFi、NFTや各種サービスへのアクセスを提供するゲートウェイとして機能しています。
eコマース企業では、テレグラムアプリ内での商品購入と決済を一気通貫で完結できるシステムの採用が広がっています。さらに、ゲーム企業によるブロックチェーンゲームの開発も活発化しており、従来のゲームにTONの機能を取り入れる開発などが進められています。
分散型金融(DeFi)の分野でも、TONの活用が着実に進んでいます。「DeDust.io」や「Ston.fi」といった分散型取引所がすでに稼働しており、テレグラムアプリからの直接アクセスを可能にすることで、DeFiサービスへの参入障壁を下げることを目指しています。
また、レンディングプロトコルの開発も進み、ステーキングサービスや流動性提供プログラムなど、多様な金融サービスが展開されています。特に、テレグラムウォレットとの連携により、複雑な操作を必要としない直感的なDeFiサービスの提供を実現しています。
TONは、テレグラムという巨大なユーザーベースを持つメッセージングアプリとの親和性を活かし、Web3テクノロジーの普及に大きく貢献しています。特に、これまでブロックチェーン技術に触れる機会のなかった一般ユーザーに対して、シンプルで使いやすい入り口を提供している点は高く評価できます。
Tap-to-Earnゲームやミームコインの成功は、TONプラットフォームの可能性を示す好例となっています。また、既存企業による採用も進んでおり、今後さらなるビジネス活用の広がりが期待されます。
一方で、多くのプロジェクトがまだ発展段階にあることや、規制環境の変化への対応など、課題も存在します。それでも、9億5,000万人以上のテレグラムユーザーという潜在的なユーザーベースを持つTONは、今後もWeb3の大衆化を牽引する存在となるでしょう。