暗号資産は世界中で取引されますが、意外と処理能力には限界がある事をご存知でしょうか?
取引需要が処理能力を上回った際に、送金遅延や手数料高騰などが起きてしまいます。暗号資産の特徴である「速くて安い送金」というメリットが失われてしまうのです。こうした問題は、暗号資産の普及に大きな障壁となっています。
この暗号資産業界における大きな課題について、わかりやすく解説していきます。(過去に掲載したブロックチェーンの基礎知識「ブロックチェーンとは何か?仕組みをわかりやすく解説」も是非併せてご覧ください)
(引用:Pixabay)
スケーラビリティとは、システムやネットワークなどの規模を拡大する際の対応力を表す言葉です。暗号資産の世界では、主に1秒あたりに処理できる取引件数(TPS)を指します。
暗号資産のスケーラビリティ問題とは、取引需要が処理能力を上回った際に発生する送金遅延や手数料高騰などが起きることです。
例えば、ビットコインのTPSは約7件、イーサリアムは約27件と、既存の決済システムの代表例であるVisaクレジットカードのTPS1,700と比べるとかなり見劣りします。
そのため、利用者が増えるとすぐに処理能力の限界に達してしまうのです。
スケーラビリティ問題が深刻化すると、送金に時間がかかったり、手数料が跳ね上がったりします。暗号資産の特徴である「速くて安い送金」というメリットが失われてしまうのです。
また、相場の急変時などに売却したくてもできない事態も発生しかねません。こうした問題は、暗号資産の普及に大きな障壁となっています。
根本的な原因は何なのか?スケーラビリティ問題が簡単に解決できない理由は、ブロックチェーンの特性にあります。
ブロックチェーンは改ざんが難しく透明性が高い一方で、アップデートには全ユーザーの合意形成が必要不可欠。スケーラビリティ問題のように大幅な変更を伴う場合、コミュニティ内の意見対立を招きやすいのです。実際、ビットコインではスケーラビリティ問題への対応を巡って分裂(ハードフォーク)が実施された過去もあります。
スケーラビリティ問題への対策として、各暗号資産プロジェクトは様々なアプローチを試みています。ここではビットコインとイーサリアム、その他の暗号資産の解決策を紹介します。
(引用:Pixabay)
ビットコインでは「SegWit」という技術を導入しました。これは、トランザクションデータの一部を分離し、ブロック容量を実質的に増やすものです。
また、「ライトニングネットワーク」という、ビットコインのセカンドレイヤーソリューションも開発中です。これは、ユーザー間で支払いチャネルを開設し、そこで取引を行うことで、ビットコインのスケーラビリティを大幅に向上できると期待されています。
(引用:Pixabay)
一方、イーサリアムでは、「シャーディング」と呼ばれる技術が注目を集めています。これは、ブロックチェーンをシャード(断片)に分割し、並行処理を可能にするものです。
また、「ロールアップ」という、トランザクションをまとめてオフチェーン(ブロックチェーンを使わない処理)で処理し、その結果のみをイーサリアムのメインチェーンに記録する技術も開発されています。
(引用:Pixabay)
さらに、新しい暗号資産の中には、スケーラビリティ問題を抜本的に解決することを目指したものもあります。例えば、ポリゴンは「Proof of Stake」と呼ばれるアルゴリズム(ブロックチェーンのルール)を採用し、TPSを7,000件まで向上させています。
また、ソラナは「Proof of History」というユニークなアルゴリズムを使用し、50,000件ものTPSを実現しています。
このように、ビットコインやイーサリアムといった大手から、新興のプロジェクトまで、スケーラビリティ問題への対応は暗号資産業界全体の大きな課題となっています。各プロジェクトは、それぞれの特性に合わせて、様々な技術的アプローチを試みているのが現状です。
暗号資産のスケーラビリティ問題は、業界の発展において避けて通れない課題です。
その根本的な原因は、ブロックチェーンの特性にあります。改ざんの難しさと引き換えに、システムのアップデートが困難になっているのです。
ビットコインやイーサリアムをはじめ、各暗号資産プロジェクトは、それぞれの事情に合わせた解決策を模索しています。データ圧縮、オフチェーン取引、新アルゴリズムの採用など、様々なアプローチが試みられているのが現状です。
しかし、完璧な答えは見つかっておらず、どの方法にもメリットとデメリットが存在します。
スケーラビリティ問題の解消には技術的な革新と、コミュニティ内の合意形成の両輪が欠かせません。今後も、この分野の研究開発や議論の行方を注視していく必要がありそうです。