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2024.10.21

【暗号資産のビジネス活用を学ぶ④】BNB:取引所発行コインが切り開く新たな暗号資産エコシステム

BNB(ビルドアンドビルド)は、世界最大級の暗号資産取引所Binanceが発行する独自のトークンです。2017年の登場以来、単なる取引所トークンの枠を超え、独自のブロックチェーンエコシステムの中核として急速に成長してきました。

その多様な用途と高い流動性により、2024年現在、BNBは暗号資産市場において重要な位置を占めるようになっています。特に、Binance Smart Chain(現BNB Smart Chain)の誕生以降、DeFiやNFTなど、様々な分野におけるアプリケーション開発の基盤としても注目を集めてきました。

本記事では、BNBの基本的な仕組みから具体的なビジネスでの活用法、すでにBNBが導入されている実例に至るまで、幅広く解説します。

BNB(Build and Build)とは?

(引用:Binance

BNB(Build and Build:ビルドアンドビルド)は、暗号資産取引所のBinanceが発行する暗号資産です。当初はイーサリアムのERC-20トークンとして発行されましたが、現在は独自のブロックチェーンであるBNB Chainのネイティブトークンとして機能しています。

BNBの誕生と歴史

BNBは2017年7月、Binanceの立ち上げに先立って実施されたICO(イニシャル・コイン・オファリング)でローンチしました。当初は取引手数料の割引や新規上場コインの購入権獲得などに利用される取引所トークンでしたが、その後急速に用途を拡大しています。

2019年4月にはBinance Chain(現BNB Beacon Chain)が立ち上げられ、BNBはこのチェーンのネイティブトークンとなりました。さらに2020年9月には、スマートコントラクト機能を持つBinance Smart Chain(現BNB Smart Chain)が稼働を開始し、BNBのエコシステムは大きく拡大しました。

BNB Chainの特徴

Binanceエコシステムの根幹にあたるBNB Chain(BNB Beacon ChainおよびBNB Smart Chainの総称)は、高速・低コストの取引を実現するブロックチェーンプラットフォームです。イーサリアムとの互換性を持ちながら、より高いスケーラビリティを提供しています。

BNB Chainの特徴として、高速な取引処理能力が挙げられます。従来のブロックチェーンと比較すると、BNB Chainは約3秒という非常に短い時間で取引を確定させることができます。

また、低い取引手数料も大きな特徴です。特にイーサリアムネットワークと比較すると、その差は顕著に見られます。そのため、小額取引やマイクロペイメントなど、これまで高額な手数料のために実現が難しかった取引形態が可能になっています。

さらに、BNB Chainはイーサリアムと高い互換性を持っています。イーサリアム用に開発されたツールやウォレットの多くがBNB Chain上でも利用可能です。これにより、既存のイーサリアム開発者がスムーズにBNB Chainに参入できるだけでなく、イーサリアム上で人気のあるDApps(分散型アプリケーション)をBNB Chainに移植することも容易になっています。

最後に、BNB Chainは優れたクロスチェーン機能を提供しています。この機能により、異なるブロックチェーン間での資産移動が容易になり、ユーザーは複数のブロックチェーンにまたがる資産を効率的に管理・利用できます。この相互運用性は、ブロックチェーン技術の採用拡大と、より包括的な暗号資産エコシステムの構築に寄与しています。

BNBの用途と特徴

BNB ChainのネイティブトークンであるBNBは、Binanceエコシステム内で多様な用途を持っています。

主な用途としては、Binanceにおける取引手数料支払いに利用できる点が挙げられます。BNBで手数料を支払うことで割引が適用されるため、ユーザーにとっては取引コスト削減のインセンティブとなっています。

また、BNBはBinance Launchpadで行われるIEO(Initial Exchange Offering)への参加に必要不可欠です。新規プロジェクトのトークンセールに参加する際にBNBが要求されるため、新興の暗号資産プロジェクトに早期に投資したい投資家にとって、BNBは重要な役割を果たしていると言えます。

さらに、DeFiプロトコルやNFTマーケットプレイスなど、BNB Chain上で運営される様々なDAppsでもBNBは利用されています。そのため、Binanceエコシステム上で展開しているプロジェクトとBNBの価値は、相互に関連するものとなっています。

これらの用途に加えて、BinanceはBNBの価値を維持する策として、定期的な買い戻しと焼却(バーン)を実施しています。この取り組みにより、BNBの総供給量が徐々に減少し、希少性が高まることで、長期的な価値の維持に寄与していると考えられています。この独自の経済モデルは、BNBを単なるユーティリティトークン以上の存在にしています。

BNBのビジネス活用

BNBは、その多様な用途と大規模なエコシステムにより、様々なビジネス分野での活用が進んでいます。ここでは、BNBの主要なビジネス活用例を紹介します。

DeFiプラットフォームの基盤

BNB Chainは、低コストで高速な取引を実現できるため、特にDeFi(分散型金融)プロジェクトの基盤として広く採用されています。

(引用:PancakeSwap

例えば、PancakeSwapはBNB Chain上で最大規模の分散型取引所(DEX)です。ユーザーは、PancakeSwapを利用して様々な暗号資産の取引や流動性提供を行うことができます。また、Venus ProtocolやAlpaca Financeなどのレンディングプラットフォームでも、BNBを担保とした融資や利子獲得が可能です。

これらのDeFiプロジェクトは、従来の金融サービスよりも効率的・低コストのサービスの提供を目指しており、BNBはその基盤通貨として重要な役割を果たしています。

NFTマーケットプレイスでの活用

BNB Chainは、NFT(非代替性トークン)の発行と取引にも広く利用されています。

上述したPancakeSwapのNFTマーケットプレイスなど、多くのプラットフォームがBNB Chain上で運営されています。これらのプラットフォームでは、BNBを用いてNFTの購入や取引手数料の支払いができます。

NFTの活用範囲は、デジタルアートやゲームアイテムから、不動産所有権や知的財産権のトークン化に至るまで幅広いものとなっています。BNBは、これらの新しい形態の資産取引を支えている重要な通貨だと言えます。

クロスボーダー決済と送金

BNBは、国境を越えた送金や決済にも活用されています。Binanceの大規模なユーザーベースと高い流動性により、BNBは国際送金の手段として注目を集めています。

特に、従来の銀行送金と比較してBNBを利用した送金は手数料が低く、処理速度も速いという利点があります。これは、新興国や銀行サービスへのアクセスが限られた地域での金融サービス提供にも貢献しています。

また、Binance CardのようなBNB対応のデビットカードサービスにより、実店舗でのBNB決済も可能になっています。

BNB導入の実例

BNBの実用化は着実に進んでおり、様々な分野で導入事例が増えています。これらの事例を知ることで、BNBの実際の活用方法とその可能性がより明確になるでしょう。

Binanceエコシステムでの活用

Binanceエコシステム内でのBNBの活用は多岐にわたります。

すでに述べた取引所での手数料割引やLaunchpadでのIEO参加のほか、Binance Earnというサービスを通じてBNBの保有者は追加の収益を得る機会があります。

Binance Earnでは、ユーザーがBNBをステーキングすることで利子を獲得できるほか、レンディングサービスを通じてBNBを貸し出して収益を得ることも可能です。

さらに、Binance Earnには柔軟な運用オプションが用意されており、ユーザーは自身のリスク許容度や投資期間に応じて最適な運用方法を選択できます。例えば、固定期間のステーキングでより高い利回りを狙うことも、柔軟な出し入れが可能なフレキシブルステーキングを選ぶこともできます。

BNB Chain上のDApps展開

BNB Chain上では、多様なDAppsが展開されています。

特に注目されるのは、PancakeSwapという分散型取引所です。PancakeSwapはBNB Chain最大のDEXとして日々膨大な量の取引を処理しており、その取引量は中央集権型の大手取引所に匹敵するほどです。ユーザーフレンドリーなインターフェースと低い取引手数料により、暗号資産トレーダーの間で高い人気を誇っています。

また、Venus Protocolは、BNB Chain上で最大規模のレンディングプラットフォームとして機能しています。このプロトコルを通じて、ユーザーは様々な種類の暗号資産を担保に融資を受けたり、逆に資産を貸し出して利子を得たりすることができます。

これらのDAppsの成功は、BNB Chainが提供するスケーラビリティおよび低コストの取引環境の有用性を実証していると言えます。その結果、現在ではますます多くの開発者やプロジェクトがBNB Chain上でのDApps開発に参入しています。

大手取引所が主導する次世代の暗号資産エコシステム

BNBとBNB Chainは、取引所発行のトークンおよびその独自チェーンという新しいモデルを示すことで、暗号資産エコシステムに大きな影響を与えています。

高いスケーラビリティと低コストの取引を実現するBNB Chainは、DeFiやNFTなど新しい金融サービスの基盤として機能し、従来の金融システムを補完・代替する可能性を秘めています。また、クロスチェーン技術の発展により、異なるブロックチェーン間の相互運用性も向上しつつあります。

一方で、中央集権的な取引所が発行するトークンという性質上、真の意味での分散化の実現や規制対応など、克服すべき課題も存在します。特に、各国の規制当局の動向やセキュリティの確保などについては今後も注視が必要です。

BNBとBNB Chainの今後の発展は、暗号資産業界全体の方向性に大きな影響を与える可能性があります。暗号資産市場の成熟と共に、BNBのような多機能型のトークンとそのエコシステムの役割は、ますます重要になると予想されます。