デジタルヒューマンとは、AIや3DCGの技術を用いて現実の人間と区別がつかないほどリアルなキャラクターを、デジタル上に作りあげたものです。AIや3DCG技術の進歩により高いクオリティのデジタルヒューマンが登場し、様々なビジネス分野において活用されるようになりました。
本記事ではデジタルヒューマンの活用事例を3選紹介します。
※「バーチャルヒューマン」との違いもぜひ知っておきたいところ。過去に公開したいまさら聞けない! 「バーチャルヒューマン」って一体なんだ⁉もぜひ併せてお読みください。
NHKエンタープライズが開発したKIKIは、聴覚障がい者のデジタルディバイド(音声情報へのアクセスが困難であることによる情報格差)という社会課題の解決を目指すために開発された、手話が得意なデジタルヒューマンです。KIKIは24時間365日、リアルタイムでデータ連携し、あらゆる場所に掲出可能です。
KIKIの取り組みは、2024年の「The 28th Annual Webby Awards」で2部門を受賞するなど、国際的に高く評価されました。聴覚障がい者と健常者をつなぐ架け橋として、様々な場所に登場する予定です。2025年の東京デフリンピックでは大会アンバサダーに選出され、手話CGによる情報発信を通じて大会のPRに貢献します。
KIKIは聴覚障がい者に適切な情報を届けるインクルーシブな社会の実現に向けて、今後ますます重要な役割を果たすことが期待されています。
東映ツークン研究所はデジタルヒューマン技術を用いて、故・松田優作を現代に蘇らせるプロジェクトを実施しました。3DCGデータと機械学習による顔モデル、トラッキング技術による表情アニメーション、AI音声合成により松田の特徴を忠実に再現しています。
ショートムービーでは夜のドライブシーンやスマートフォンでの通話、ジッポーに火をつける姿など現代と昭和が融合した映像が展開され、まるで松田が現代に蘇ったかのような臨場感を味わえます。
今後、この技術を活用し、過去の偉人やスターを現代に蘇らせる新たな映像体験の創出や、社会実装に向けた課題解決に取り組んでいく予定です。
エンターテインメント業界では、シリコンバレーのテック系企業Brudが発表したLil Miquela(リル・ミケーラ)が代表的です。
Lil Miquelaは2024年8月時点で250万人以上のフォロワーを持つインスタグラマー(@lilmiquela)として活躍し、歌手やオリジナルブランドの展開も行っています。かなりリアルな見た目ですが、彼女も架空のデジタルヒューマン。
Brudの特徴はストーリー性のあるキャラクターを創造し、トランスメディアのスタジオとしてビジネスを展開していることです。「Lil Miquela」は、SamsungやPradaとのタイアップ、音楽フェスティバルのホスト役など、多彩な活動を展開しています。収益モデルは、ブランドとのパートナーシップ、歌手活動、メディア出演、グッズ販売など多岐にわたります。
Brudの長期的なビジョンは、空間コンピューティングの浸透を見据え、キャラクターをメタバースのナビゲーターやインターフェースにすることです。現在は、プラットフォームに依存しない大規模なファンコミュニティの構築に注力しています。
今後、世界のデジタルヒューマン市場は急速に成長していくと予想されており、Data Bridge Market Researchによる調査では、2023年の216億8,000万ドルから2031年までに4,307億1,000万ドルに達すると予測しています。
(引用:Data Bridge Market Research)
AIや3DCG技術の進歩も伴い、今後新しいビジネス活用方法が広がることが期待されています。今のうちにデジタルヒューマンについて詳しく学び、自社のビジネス活用に役立てていただければ幸いです。