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2024.08.13

暗号資産の新たなトレンド?リステーキングの仕組みに迫る

暗号資産界隈で新たなトレンドとして注目を集めているのが「リステーキング(Re-Staking)」です。

イーサリアムベースのEigenLayerが開発したこの仕組みは、ステーキング資産を重層的に活用することで、より高い利回りを実現します。2024年に入り、イーサリアムだけでなくソラナなど他のブロックチェーンでも類似のプロジェクトが次々と登場し、業界全体で大きな盛り上がりを見せています。

本記事では、リステーキングの概要や仕組み、主要なプロジェクト、今後の展望などについて詳しく解説します。初級者にとっては少し専門用語が続きますが、出来る限り補足しつつ紹介します。

リステーキングとは何か

リステーキング(Re-Staking)を理解するには、まずステーキングについて知る必要があります。

ステーキング

ブロックチェーンネットワークの安全性と効率性を維持するために、保有する仮想通貨を預け入れ(ロックアップ)する行為です。ステーキングを行ったユーザーは、ネットワークの運営に貢献した事で報酬を得ることができます。

これは主にプルーフ・オブ・ステーク(PoS)と呼ばれる合意形成メカニズムを採用しているブロックチェーンで行われます。

リステーキングは、ステーキングの概念をさらに発展させたものだと言えます。

具体的には、すでにステーキングされている資産を別のプロトコル(指示)で再度ステーキングする仕組みを指します。これにより、同じ資産を複数のプラットフォームで並行して運用することが可能になり、より高い利回りを得ることができます。

例えば、暗号資産であるイーサリアム(ETH)をステーキングした後、そのステーキング済みのETHを別のプロトコルでさらにステーキングすることで、イーサリアムネットワークの安全性の維持に貢献しながら、異なるプロトコルからも追加で報酬を獲得できます。

なぜ今リステーキングが注目されているのか

リステーキングが注目を集めている理由は、「資金効率の大幅な向上」が実現できる点にあります。同じ資産を複数のプロトコルで運用できるため、特に機関投資家や大口保有者にとって魅力的な仕組みだと言えます。

また、複数のプロトコルが同じセキュリティ基盤を共有できるため、エコシステム全体のセキュリティ強化にも貢献します。

例えばイーサリアムの場合、後述するEigenLayerを通じてステーキングされた大量のETHが、異なるレイヤー2プロトコルやDeFiプロジェクトのセキュリティ基盤として機能します。これにより、個々のプロジェクトが独自にバリデーターネットワークを構築する必要がなくなり、イーサリアムエコシステム全体のセキュリティが向上します。

火付け役は「EigenLayer」

リステーキングの火付け役となったのは、イーサリアムブロックチェーン上に構築されたEigenLayerというプロトコルです。EigenLayerは、イーサリアムのステーキング資産を効率的に再活用する方法として、リステーキングという新しい技術を提案しました。

(引用:EigenLayer

EigenLayerの仕組み

EigenLayerは、すでにBlockchain CapitalやPolychain Capital、Coinbase Venturesなど著名なベンチャーキャピタルから出資を受けており、業界内で高い注目を集めています。

EigenLayerの仕組みは以下の通りです。

●ユーザーは、イーサリアムのビーコンチェーンでステーキングしたETHをEigenLayerに登録する
登録されたETHは、EigenLayer上に構築された様々なサービス(AVS:Actively Validated Services)で再利用される
ユーザーは元のETHのステーキング報酬に加えて、AVSから追加報酬を得られる

また、EigenLayerはstETH(Lido Staked Ether)やrETH(Rocket Pool Ether)などのリキッドステーキングデリバティブ(LSD)にも対応しています。

リキッドステーキングデリバティブとは、ステーキングした資産に対して発行される流動性の高いトークンのことです。元の運用資産(ETHなど)に加えて、LSDを同時にリステーキングにすることで追加報酬が得られるため、資産運用の幅が非常に広がります。

EigenLayerがもたらす重層的な利回り

EigenLayerの最大の特徴は、ステーキング資産から複数の報酬を得られる点です。具体的には、以下の2点が主な報酬として挙げられます。

●イーサリアムのステーキング報酬
AVSからの追加報酬

これにより、単純なETHステーキングと比較して、より高い利回りを実現できる可能性があります。ただし、リスクも増加するため、利用する際は慎重な判断が必要です。

主要なイーサリアムベースのリステーキングプロトコル

EigenLayerの登場以降、複数のリステーキングプロトコルが開発されています。主要なプロトコルとして、以下のようなものが挙げられます。

●KelpDAO
AltLayer

これらのプロトコルは、EigenLayerの基本概念を拡張した上で、それぞれ独自の特徴を持っています。例えば、KelpDAOはより流動性の高いリステーキングを、AltLayerはモジュラーブロックチェーンに特化したソリューションを提供しています。

(引用:KelpDAO

リステーキング市場は急速に拡大しており、新たなプロジェクトや革新的なアプローチが次々と登場しています。

他のブロックチェーンでの事例

リステーキングの概念は、イーサリアム以外のブロックチェーンにも広がっています。

ソラナ(SOL)では、Solayerなどがリステーキングネットワークとして注目を集めています。Solayerは、ソラナやリキッドステーキングトークン(LST)のリステーキングを可能にし、Endogenous AVS(Actively Validated Services)と呼ばれる分散型サービスの開発をサポートしています。

他にも、JitoやCambrian、Picassoなどの競合プロジェクトも台頭しています。これらのプロジェクトは、それぞれ独自の特徴を持ちながら、ソラナエコシステムにおけるリステーキングの可能性を広げています。

リステーキングがもたらす可能性と課題

リステーキングは、web3のエコシステムに革新をもたらす可能性を秘めています。しかし、その一方で新たな課題も浮上しています。

ここからは、web3エコシステムへの影響、企業がリステーキングに注目すべき理由、そして潜在的なリスクについて詳しく見ていきましょう。

web3エコシステムへの影響

リステーキングがweb3エコシステムにもたらす主な影響は以下の通りです。

●資本効率の向上
新規プロジェクトの促進
インターオペラビリティの強化
DeFiの進化

特に注目すべきは、資本効率の向上です。同じ資産を複数のプロトコルで活用できることで、エコシステム全体の資本効率が大幅に向上します。これにより、より多くのプロジェクトが「少ない初期資本」で立ち上げられる可能性が高まります。

企業がリステーキングに注目すべき理由

企業(事業者)がリステーキングに注目すべき主な理由は以下の通りです。

●新たな収益源の確保
イノベーションの機会
web3エコシステムへの積極的な参加
堅牢なセキュリティ基盤の活用

特に注目すべきは、堅牢なセキュリティ基盤の活用です。

ブロックチェーンを活用した事業者にとって、大規模で安定したバリデーターネットワークの構築は、セキュリティ向上のための重要な課題の一つです。

EigenLayerなどのリステーキングプロトコルが提供する既存の強固なセキュリティ基盤を活用することで、企業は自前でバリデーターネットワークを構築する必要がなくなります。これにより、より安全で信頼性の高いサービスを提供できる可能性が高まります。

潜在的なリスクと注意点

リステーキングには、以下のようなリスクや注意点もあります。

●収益構造の複雑化
スマートコントラクトのリスク
規制に関する不確実性
中央集権化のリスク

特に注意が必要なのは、スマートコントラクトのリスクです。リステーキングは複数のプロトコルに跨った重層的な構造を持つため、一つのスマートコントラクトに脆弱性があった場合、その影響が広範囲に波及する可能性があります。

例えば、イーサリアムやEigenLayerのような「リステーキングの基盤」となるプロトコルで問題が発生すると、それに依存する全てのサービスが影響を受け、大規模な損失につながる恐れがあります。

このリスクを軽減するためには、信頼できるプロトコルを選択することはもちろん、リスクを分散させ、過度に単一のプロトコルに依存しない構造を採用することが重要です。

リステーキングの今後の展望

リステーキングは、web3エコシステムに革新をもたらす可能性を秘めた技術です。資本効率の向上や新規プロジェクトの開発促進など、多くのメリットがある一方で、複雑性の増大やスマートコントラクトのリスクなどの課題も存在します。

今後、これらの課題に対する解決策の開発や規制環境の整備が進むことで、リステーキングの普及はさらに加速すると予想されます。イーサリアムやソラナなど主要なブロックチェーンでの採用拡大や、新たな応用例の登場も期待されるでしょう。

企業や投資家は、リステーキングがもたらす機会とリスクを慎重に評価し、適切なリスク管理を行いながら、この新しい技術を活用していくことが重要です。リステーキングは、主に金融面におけるweb3の進化を担う重要な要素となり得ます。ぜひ、今後の動向に注目しておきましょう。