3Dデータのビジネス活用が大きく変わろうとしている。建設業や製造業、エンタテイメントなど一部の業界では活用が進んできたが、今後はあらゆる業界で3Dデータが活用されるかもしれない。
「Xデーはすぐそこ。ビジネスでも日常でも、すべてのビジュアル素材が3Dデータ化される日は近い。流れに乗り遅れずビジネスチャンスをつかんで欲しい」と熱く語るのが、東京大学発のAIスタートアップ、bestat代表の松田尚子氏だ。
AI研究の権威「東京大学松尾研究室」出身の松田氏は、独自開発したアルゴリズムにより、あらゆるものを3Dデータ化できる環境を提供。業界に旋風を巻き起こしている。今回、MetaStep(メタステップ)編集部は松田氏に独占取材。AIにより3Dデータの活用がどう変わるのか、ビジネス活用にいかに応用できるのか、その全貌に迫った。(文=MetaStep編集部)
確かにそうかもしれませんね(笑)。
キャリアのスタートとしては経済産業省に入省し、その後、米コロンビア大学に留学しました。その時は、データサイエンスなど、今のAIにつながる領域について学ぶ機会に恵まれました。
日本に戻ってからは、海外で学んだことを政策に役立てることができればと思っていたのですが、政策はデータだけでは決めることができないんですよね。いわゆる政治的な要素もかなり絡んできます。
一方、帰国後は松尾先生のもとで研究者としての活動も行い、実際に企業の方にアルゴリズムを使っていただくといった経験も積んでいました。政策提言に関わったり、純粋に研究者という立場で活動を続けたりするよりも、ビジネスとしてAIなどのテクノロジー領域に関わったほうがより自身の知見を活かせるんじゃないかなと感じるようになったんです。
そこで2018年にbestatを設立し、AIによる3Dモデリングの技術開発に本格的に着手し始めました。bestatでは、「3D.ai」というサービスを開発・提供しています。スマートフォンなどで撮影した写真をもとに、AIが自動で3Dデータを作成してくれます。
これまで、3Dデータを人の手で作成していた時は、1つのモデルを作るのに10~20時間程度かかることもありました。「3D.ai」を導入することで作成時間の7〜8割を削減できた事例もあります。現在はまだ、製造業、建設業など、元々3Dモデリングの技術を導入していた業界での導入が主ですが、今後はデジタルツインやメタバースなど、より多様なジャンルで活用が進むのではと思っています。