人同士のコミュニケーションは、あらゆる情報が絡みあっている。外見や性別といった個性だけでなく、場所といった外的要因も大きく左右する。メタバースでは、これらは全て自由に変えられるのが特徴だ。アバターになる事で見た目や性別はもちろん、空間すら自由に構成する事も可能だ。この利点を活かし、メタバース内で「コミュニケーション」について研究を進める方々がいる。バーチャルならではのユニークな実験方法で、対人コミュニケーションの意外な一面・メリットが明らかになっている。
この研究は、今後バーチャルオフィス、バーチャル展示会、バーチャルイベントにも応用が出来るだけでなく、現実のコミュニケーション方法にも応用が期待されている。
東京都市大学、システムインテグレーターのTIS、岡山理科大学、工学院大学の開発した技術と研究成果を追った。(文=MetaStep編集部)
コロナ禍に多くの企業が導入したリモートワークも、現在では廃止したり、割合を減らす企業が増えている。移動の必要がなくどこでも働ける上、ミーティングはビデオチャットを開けばすぐ話せるのがリモートワークのメリットだが、それでも「リアルがいい」と考える人が多いようだ。
一部の企業で挙げられた制度廃止についての理由はこうだ。「社員同士のカジュアルな交流、つまり休憩中の何気ない雑談から、新しい発想や意外なビジネスアイデアが生まれることがある。いざミーティングを開いてブレインストーミングをする時よりも、柔軟なアイデアが出やすい傾向がある」。こういった「偶然の産物」が激減していることで、「バーチャルより、リアルが良い」という意見が出るようだ。
この事実に対してTIS 戦略技術センターの井出将弘氏は「もちろん、リアルの場で生まれるコミュニケーションは有用です。ただ、バーチャル空間においても、コミュニケーション方法を『事前に設計』することで、コミュニケーションを生み出すことができますし、ときには現実よりも大きな効果を発揮します」と指摘する。
TIS 戦略技術センター 井出将弘氏。 先進技術の研究によって事業創出を目指して多くのプロジェクトに参加中だ