日本におけるバーチャルリアリティ(VR:仮想現実)研究の中心的な柱の1つが、「東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター(VRセンター)」だ。東京大学内の様々な学部や研究組織と横に連携し、民間企業や団体とも協力して最先端の研究と情報収集を行っている。今回、MetaStep(メタステップ)編集部は、センター長を務める東京大学教授の相澤清晴氏に、同センターの目的やこれまでの成果、企業と連携などについて聞いた。人の五感とVRの連携や、メタバースの新たな構築手法など、活動の一端が明らかになった。
VRセンターは、VR研究の世界的拠点を作ることを目的に設立された。東京大学の学部や研究組織を横断的につなぐ「連携研究機構」という位置づけになる。2018年2月からの5年間で第1期を終えた。その成功を受け、2023年2月から2期目に入っている。日本におけるVR研究のハブ的な存在として、基礎と応用の研究を進めている。
「2期目に入り、7つだった連携部局が10に拡大しました」と語るのは、東京大学教授でVRセンター長の相澤清晴氏だ。連携部局とは、VRセンターに運営委員を出して密接に連携する学内組織のことだ。第1期は「情報理工学系研究科」「情報学環」「新領域創成科学研究科」「人文社会系研究科」「医学系研究科」「工学系研究科」「先端科学技術研究センター」の7つだったが、新たに「農学生命科学研究科」「教育学研究科」「情報基盤センター」が加わった。
この背景には、VR活用のフィールドが広がっている現状がある。例えば、農学生命科学研究科は「附属動物医療センター」、いわゆる動物病院で行われている手術の様子を360度カメラで撮影し、ユーザーが見たい部分を自由に見られるインタラクティブ性を備えたVR教材を製作している。教育学研究科は、オンライン教育へのVR活用を模索する。情報基盤センターは、VR、メタバースの活用を確立しようとしている。
「コロナ禍を機に日常生活のオンライン化が加速し、VRへの注目が高まっています。あらゆる分野でVRの活用が期待されています」と相澤氏は話す。